マジョリティを占めるケースが増えている。また外国への入国後,労働者化する女性も少なくない。
 彼女たちの多くは,移民労働者としてのレイシズムと女性としてのジェンダーの二重の差別下におかれ,受け入れ国労働市場の最底辺部分に位置付けられている。したがって,外国人労働者が一般的に負わされる周辺的労働としてのいわゆる忌避(3K-英語では3D: dangerous / dirty / demanding)職種労働に,さ らに女性特有のジェンダー差別的性格が付帯 されることになり,結果,極めて限られた職種領域に押し込められるのである注40)。その内容は,一般に二つに大別できる。一つは製造業における現業労働,もう一つは雑多なサービス職種の労働である。
 前者は,ハイテク産業の最底辺単純作業,ならびに繊維,衣服,履き物,食料や日用雑貨など,典型的な労働集約的産業や生産工程の最低賃金労働部分を注41)担うものである。より周辺的な諸国・諸地域出身の女性移民労働者は,コスト原理が希求する低賃金をはじめ,より低劣な労働諸条件を甘受する。これは既に(a. 工業労働)で示した,今日の途上地域への工業生産立地移転による現地女性労働者動員という事態の進展と,いわば表裏の関係にある。熾烈なグローバル競争時代,コスト原理は,企業による労働力充用の国際化・グローバル化を進展させ,途上国女性労働の利用を拡大している。低コスト労働としての女性移民労働の利用は,企業の海外進出と並ぶ,その方式・方途の一つにほかならな い。その方向性としての逆の動きに着目すれば,生産要素の動態という視点から,前者は "Capital to Women Labour",後者は"Women Labour to Capital" と表現しうるであろう。
 後者に代表的なのが,サービス業における
古典的女性職の代表であるメイドや興業関連サービス職(広義には売春も含まれる注42))であり,小売業や飲食業での手伝いを加えた縁辺的職種,ならびに専門・技術職の底辺に位置づけられる看護婦などで大半が占められる。入国や就労が非合法の場合も少なくなく,インフォーマル化しやすいため,悪質なエージェンシーからの搾取,さらには暴力やセクハラを受けやすい状況下におかれる可能性が極めて高い注43)

 VI. 結びにかえて
 現代の国際分業において,その現代的特殊諸条件の下,ことに劇的に変動している領域,低迷・衰退している領域などで,いずれもそれぞれの最も周辺的な部分への女性労働の充用が,急速に広がっている。そこには,ジェンダー差別的要素が極めて濃厚に感じられる。そもそも今日,グローバル化の展開が資本による市場原理主義の世界的展開にほかならない時代にあって,メガ競争をサバイバルするため,生産諸要素の低コスト化とフレキシブルな利用が追求されるのは当然の流れといえよう。そうした要請に最大の適性をもって対応しうる要素として,今日,労働力 に関しては女性労働が積極的に活用されてい るのであり,その進展が「労働力の女性化」と捉えられるのである。
 このように近年の状況をみてくると,女性労働の問題は,今日の国際分業のあり様,そのシステムを理解する上で看過できない極めて重要なものとなっていると考えられる。にもかかわらず,旧来から,古典的経済学の理論体系がそうであるように,現在の国際経済学でも一般にジェンダーレスな方法論が支配的である。今後,あらゆる経済学の
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